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きっかけは何となくかも知れませんが......葉巻店の店頭、葉巻倶楽部の個人保管庫、あるいは自分の保管箱から葉巻を選ぶ段階からすでに葉巻の楽しみが始まっています。どの銘柄にしようか、「読書だから軽いものにしよう」とか、それとも「デザートの後だから少し強めが良いかな」とか......などなど、銘柄、大きさや形状、飲み物や喫う時刻や、時間などの状況をあれこれと考えながら選択肢を狭めて行きます。
私の場合、喫煙可能な時間から大きさを選ぶようにしています。例えば夕食後に1時間程度ということであればROBUSTO、バーに移動してゆっくり出来るような場合はJULIETA2という具合にです。
喫煙時刻や状況に応じて銘柄を選びます。午前か午後か、あるいは夕刻か深夜か?はたまた食前か食後か?お茶を飲むのかコーヒーか?アルコール類は?などなどです。休日午後の読書の時間は軽いものを、晩餐の後であれば重いものをという具合です。
記憶に残っている葉巻の味や香りだけでなく、その時に見た箱の印象で決めるのも楽しみのひとつです。
銘柄により非常に凝った装飾を施したものから簡素なものまでいろいろな種類の箱が作られています。いずれの箱も中の葉巻が呼吸し熟成できるように西班牙(スペイン)杉で作られています。素っ気無い箱の代表のひとつ、PARTAGASのSERIE "D" #4の場合には仕上げの鉋を掛け忘れたような杉の木地剥き出しに銘柄の焼印が押されただけの簡素な造りです。しかし、箱の重要な機能である保湿能力を高めるために、わざと仕上げを忘れたような木地にするのは古人の知恵ということでしょうか。
反対にMONTECRISTO #5の箱のように色彩に富んだ印刷物でドレスアップされた箱も沢山あります。金銀や原色をふんだんに使い、紋章、肖像、風景などを象徴とし、華やかな飾り文字で銘柄を記されたラベル類は見るものを19世紀以前にタイムスリップさせてくれるような気がします。
また、キューバ産の葉巻の箱の裏には製造年月が暗号で刻印されています。その暗号を解読して製造年月を確認し、熟成の度合いを推測するのもワクワクします。
箱には一見紙幣のように見える産出国政府発行の証紙、製造元や輸入業者を示すシールなどが封印として貼られています。
さて、店頭であれば係りの人が切ってくれるでしょう。もちろん、海外から送られたものであれば自分自身で封を切ることになります。封印の位置を確かめて、ボックス・オープナー(■写真)やペーパー・
ナイフを使って全ての封印を慎重に切ります。一種の儀式のようなものですが、紙煙草のセロハンを開けるのと違って実にワクワクとさせられます。
COHIBA ESPLENDIDOSなどのように蓋がスナップ留めになっているものやキャビネット
の場合には封印を切るだけでそのまますぐに蓋を開けることが可能です。しかし、昔ながらの釘止めの箱の場合には釘を抜かなければなりません。そして、これも封印を切るのと同じく儀式であり、ボックス・オープナーの最大の見せ場でもあります。そして、何と言ってもアドレナリンの血中濃度を高めるのに非常に効果があります(笑)
ボックス・オープナーの封切り用の刃に少し凹んだ処があります。写真のように、その凹んだところを箱を留めている釘の頭の下に挿し込み、箱を傷つけないように用心深くグゥイーッと引っ張り上げるのが正しい使い方とされています。(しかし、私はそんなやり方は面倒なので、蓋と箱の間に刃を差し込み軽く捻るようにして釘を抜くようにしています(笑))
ついに葉巻とのご対面!と思いきや、蓋を開けると中蓋代わりに薄い西班牙杉の板や紙がひかれています。と同時にほのかに湿りを帯びた葉巻の香りが漂ってくるはずです。これぞ至福への第一歩。暫くの間、両手で箱を捧げ持ち、そっと鼻を近づけて箱から立ちのぼる香りを楽しみましょう。
時として鼻に付くアンモニア臭が強いことがあります。それは熟成が進んでいない証拠のひとつ(参照:葉巻の熟成)です。そういう場合には、子供のイタズラを見つけた父親のようにそっと微笑みながら蓋を閉じ、さっさと他の箱を選びましょう。
さて、中蓋をどけると葉巻が並んでいます関内キャバクラ(更にその下硫酸紙がひかれている場合もあります!)並んでいる葉巻の数は箱の種類によって5本、6本、8本、そして、13本という具合に異なります。若々しかったり艶やかに精悍な色合いであったり、華奢な少女が並んでいるかと思えばでっぷりと太ったX(Xには適当な名前や文字を当て嵌めて呼んでください)のような形だったり、銘柄や種類により様々な表情を見せてくれるでしょう。
もし、葉巻店の店頭で購入のために中身を確かめているのであれば、感動に浸っている場合ではありません。まず、葉巻の表面を良く観察します。外側に巻かれている葉そのものが綺麗で滑らかであるかどうか、皺がないかどうかです。そして、リングが緩んでいないかどうかを確認します。表面を確認しながらお店の人に製造年月日を尋ねるようにしています。製造されて間もないにもかかわらず皺が多いのは保存中の湿度の変化が大きかったこと、また、リングが緩いのは乾燥気味である場合が多いようですから、なるべく避けるようにしています。
さて、これという1本に目が止まったなら手にとって見ましょう。葉巻の丸く閉じられた方の端を軽く指で押さえると火をつける側が持ち上がります。火をつける側を傷つけないように気を付けながら葉巻を箱からつまみ上げましょう。そして、軽く指で押さえてみましょう。「適度な弾力」があれば良しとします......と言うのは簡単ですが、この「適度な弾力」がどんなものかは、経験的に覚えるしかないようですね(笑)
つまみ上げた葉巻を鼻の下に持って行き匂いをかいで見てください。これぞ男、これぞ嗜好品、これぞ「嫌いな人は嫌い」な匂いです(笑)
さて、姿形、匂い、手触り全てに満足したところで、いよいよ喫うための準備です。先端を切って火を付けて煙が通るようにしなければなりません。
切り方については「葉巻の小道具」ページでも紹介しておりますが、切る位置については写真の点線の位置を参考にして下さい。私はMONTECRISTO #5のように小型のものからCOHIBA ESPLENDIDOSのような大型のものまで全てにパンチを使用しています。しかし、AVO DOMAINE 20やCUPID TORPITO、そして写真のVEGAS ROBAINA UNICOSのように先端がすぼまった形状の葉巻の場合に鋏を使用しています。
パンチで穴を開ける場合の深さの目安は5ミリ程度です。また、フラット・カットの場合には先端の丸みを残すように切った方が口当たりが良いです。しかし、浅く切り過ぎると表面のラッパーのみ切り落とされて穴が開かずに喫うことができなかったり、また、屑が多くなったりしますから......何事も経験ですね(笑)
もし、専用の小道具がなかったら?映画では歯で噛み切るというシーンを見かけますが、それでは吸い口部分からラッパーが解けるなど、せっかくの葉巻が台無しです。うぅーん、ポケット・ナイフや小型の鋏で切るとか......何でもそうでしょうが、ありあわせのものを使ってスマートに上品にさりげなく用を足すことができるそんな「アナタハソノミチノタツジンデェス!」
最終手続きとして葉巻に巻かれている帯(BAND)を外すかどうか、あるいは、外すとすれば何時外すのか、というややこしい問題が残っています。
そもそもこのリング、手に葉巻の匂いが移らないようにするために指で持つところに紙のバンドを巻いたという説を根拠として「リングは外すべきではない」という一派があるかと思えば、「いやいや、そもそも葉巻は熱くなるにつれてラッパーが緩むので、それを防ぐためにグスターフ・ボックという和蘭人が発明したのである。きちんと作られた葉巻は緩む訳がないから、良質の葉巻の証として「リングを外すべきである」主張する一派もあります。
まぁ、はっきり言って、喫うだけのことならばどうでも良い事でしょう。しかし、作法には「美学」が必要です。そして、葉巻の作法という観点からは「帯は外すべき」なのです。例えば、誰の眼にも明らかな高級銘柄の図案が大きく印刷された服を纏った人は「金持ち」に見えるかも知れません。しかし、「上品」で「優雅」に見えるかという言うと(人にもよるのでしょうが)甚だ疑問であります。それと同じ事です。COHIBAやPARTAGASなど、いかにも高級葉巻然とした銘柄の印を人前に晒しながらというのはちょっと(苦笑)......えっ?葉巻そのものがすでにXってですか??......
さて、現実の問題として、簡単に外せることもあれば無理に取ろうとするとラッパーが破けることがありますので、外す場合には注意が必要です。
火を付ける道具としてマッチ、オイル・ライター、ガス・ライター、蝋燭、線香、コンロ、ストーブなどなど上げられますが、「匂いの強いもので火を付けない」という原則からマッチ
か、あるいはガス・ライターを使用することになります。オイルや蝋燭では匂いが強く、葉巻の香りが負けてしまうのです。また、マッチも硫黄分が少なく軸の長い葉巻用が準備できれば言うことありません。あるいは、葉巻の箱に中蓋や仕切りに使われている西班牙杉の薄板を裂いたものが準備できれば専用のマッチは必要ありません。(写真:ガスライター、ローラーの下にMatchPlayと刻印、と葉巻用マッチ)
かつて、点火する前に葉巻全体を炙るという儀式がありました。これは、葉巻の水分を飛ばしたり油成分を全体になじませたり、あるいはラッパーの糊の匂いを飛ばしたりと、いろいろな理屈から重んじられていたようですが、保存状態が良い葉巻の水分を飛ばす必要はなく、熟成が進んでいれば油成分はなじんでおり、かつ、ラッパーの糊も昔とは比べるまでもなく格段の進歩を遂げており、あまり意味があるように思えません。しかし、あくまで儀式ですので禁止する必要も感じません。そこはそれ、お好きなように。
さて、葉巻の吸い口を上に火を付ける方(フット)を下にして左手で持ちます。右手に火の付いたマッチを持ちます。左手で葉巻をくるくる回しながらフットを45度程度に傾け、そのマッチの炎の1センチ上当たりにかざします。
フット全体が均一に焦げて黒くなるようにじっくりと炙るようにしてください。ただ炙るだけでは、長い軸のマッチもあっと言う間に燃え尽きてしまいます。
そこで、燃焼を促進するために吸ったり、あるいは着火部分に息を吹きかけて火を大きくしようとする人も居ますが、見栄えがいいものではありません。
そういう場合は灰や燃えカスが飛び散らない程度に着火部分に空気が当たるように葉巻を前後に振りましょう。これらの手順を交互に繰り返し、フットのラッパー全体が1ミリ程度白い灰になり始めるまでは我慢です。この準備がいい加減だと葉巻を奇麗な灰に変える事が難しくなります。焦らず、じっくりと確実に着火を進めてください。
フットのラッパー全体が1ミリ程度均等に白い灰になったならばいよいよ最終段階です。葉巻を口に咥え、残ったマッチの火でゆっくりひとふかし、ふたふかししながら、やはり、葉巻を回しながら先端部全体に火を点じて行きます。そして、マッチの軸の残りを灰皿に落とすのと同時に時間の流れが少し緩やかに変わるでしょう。
ゆっくりと椅子の背にもたれ、あるいはソファーの肘掛に寄りかかり、「ゆっくり」とふかします。何とも言えない贅沢な味わいを感じることができるでしょう。一口ふかしては、しばし口の中に留め、ころがし、そして、ゆっくりと吐き出せば、福よかな香りと共に青みがかったグレーの煙が宙に漂って行くでしょう。その煙の向うには普段とは違った風景が浮かんでくるのではないでしょうか。
葉巻の種類によって若干異なりますが、一般にドミニカ産の灰は白っぽく、キューバ産はまだら状で、いずれも目が詰まって硬くなります。また、「ゆっくり」ふかすことでも灰は白っぽく硬くなるようです。従って、「ゆっくり」喫って完全燃焼するようにこころがけましょう。
紙巻煙草を喫う場合、せかせかと灰を落とす人を見かけますが、非常に落ち着きがないように感じます。そして、葉巻の場合には見栄えだけでなく味をも損ねてしまうので常に2センチ程度の灰が残るように気を付けましょう。着火部が大量の酸素にさらされたり、吸引を早くすると燃焼速度が上がり、結果的に煙の温度が上昇し、水分が蒸発し舌を刺すような味になったり
風味成分の破壊が進行します。灰が残ることで酸素の供給量が抑えられ、かつラジエター効果により着火部分の温度が下がります。灰を残しながら「ゆっくり」とふかすことで、温度が下がり、煙は適度な水分を含み、苦味が抑えられ、かつ、香りがたつことになります。
葉巻はそのまま放っておけば自然に火が消えます。つまり、適度にふかさなければ消火してしまいますから吸い続けるのであれば1分間に1度くらいはふかし続ける必要があります。もちろん、火が消えても再点火可能です。しかし、なるべく再点火は避けるよう
にしましょう。なぜなら、マッチやライターの炎の温度は最高1,200度位ですが、葉巻の着火部分はせいぜい800度というところです。つまり、再点火により煙の温度を上昇させてしまうからです。
さて、どの位まで喫い続けることが可能かというと、それは、自分で好きなだけというのが答えですが、指で持てないぎりぎりの長さまで喫っても構いません。
火が消えるまでの間わずか4−5分のことですが、葉巻が消えるまで煙はゆっくりと立ち上って行きます。それを目で追いながら、残り香をかぎながら、飲み物の最後の一口を口にしても良いかも知れません